ドラムのための筋肉学ー自分を支える力、インナーマッスル
ドラムを叩く人であれば、腕や脚をもっと動かしたいと思います。
こんにちは。音楽家のためのフィジカルセラピスト、新堂浩子です。
より動かすためには、筋力アップ、筋トレ!と考えますが、一方で脱力しろとも言われます。
より叩ける、ペダルを踏めるためには、筋力アップでしょうか?脱力でしょうか?
実は、気づかない力、インナーマッスルが働いています。
体を支えている筋力
私たちは起きていると、脚や体幹の筋肉で自分を支えています。
電車や駅で寝ている人を見ると、体を支えていないのがわかりますね。
無意識のうちに脊髄反射的に、重力に抗って姿勢を保っています(姿勢反射)。
立っているマネキンの腕を動かすと、バランスが悪くなるのがわかります。
私達も片方数キロある腕を動かし始めると、体の奥にある深層筋が働いて、バランスをとっています。
四肢を動かすとき、インナーマッスルの腹横筋が自動的に収縮することによって、体を安定させます。
インナーマッスルは全く意識しませんが、体を支えていて、手足を動かせる元です。
インナーマッスルとは
アウターマッスル
表層筋、グローバル筋とも言います。
体幹の浅いところにある筋や、腕や足、大胸筋など体を動かす筋。
体幹の腹直筋、外腹斜筋と内腹斜筋、脊柱起立筋など
腹直筋は前屈、腹斜筋と背中の筋肉は側屈、ひねるなどの姿勢に働きます。
インナーマッスル
コア筋、コアマッスル、深層筋とも言います。
(肩や腕などの深部につく筋を言うこともあります)
常に体の重心は変わるので、腹横筋が脊椎に向かって収縮して、常に自分を支えています。
インナーマッスルの筋肉名;付く所
腹横筋;お腹の一番内側、腹直筋や腹斜筋より内にあります
横隔膜;腹と胸の境、呼吸で動きます
骨盤底筋;股間で、尿道や直腸が通ります
多裂筋;背骨同士に付く筋肉
大腰筋、腸骨筋;背骨、骨盤と足の骨を結ぶ深層の筋肉
腹横筋↓
横隔膜、大腰筋、腸骨筋、骨盤底筋↓
多裂筋↓
手で荷物を持ち上げるとき、体を支える力がないと体が倒れてしまいますので、体を支える力が働きます。
大きな力を入れるときは、息で腹腔内圧を上げて脊椎や体幹をしっかりさせます。
体が安定して、かつ表層の筋肉が柔軟でないと、ドラムで腰を痛めやすいです。
インナーマッスルは自分ではわからない、意識できません。
アウターマッスルみたいに、脳からの命令で動きません。
筋肉なので、使っていないと弱く収縮しにくく弱くなります。
骨盤底筋がゆるいと、女性だとくしゃみ時に尿漏れしたり、男性でもバッティングで尿漏れします。
外側の力が強くて、内部が弱いと言うことです。
筋トレで鍛えると
手足を動かすのは、演奏で身につけた神経回路で動きの命令を筋肉に伝えて動きます。
体側からしなやかに手足が動いて、先端へ連動しやすいことが脱力、力まないと言えます。
力まないことで、細かいコントロールや、俊敏な動きが可能になります。
筋トレで重い荷重を動かすと、かたくボディビルダーのような筋肉になり、俊敏に収縮しません。
また、パーツを鍛えると、神経系による筋肉への伝達を邪魔します。
これは、イチロー選手のトレーナーの小山裕史氏、故ジョセフ・ピラティス氏らも言っています。
ドラムでは、安定した姿勢で四肢が動きやすいことが望ましいです。
力んでしまうのは
人は自分のかたさ、動きにくさを自覚しません。
思うように音を出せないと、無意識に力んでしまいます。
私たちは、体育教育やスポーツ産業の影響で「筋力が大きいほど動ける」と考えてしまいます。
演奏で動きにくいと「力不足だ、筋トレしよう」と思ってしまいます。
筋力=手足が動きやすい、ではありません。
力んだり筋力で動かす事で、楽器からの反力は大きく、疲れ、筋肉痛、故障を起こします。
また、アウターマッスルを鍛える事でインナーマッスルとのバランスを崩してしまい、腰痛になりやすいです。
インナーマッスル、まとめ
- インナーマッスルは体を安定させたり手足を動かす時に働いている
- 筋力=叩きやすい、ではない
- 安定した姿勢から四肢が動きやすく、力みにくく故障を遠ざける
『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』
バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。 趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ♪ 詳しくは ≫プロフィール |