『芸術家の声の障害~メカニズムと治療法』 

東京大学名誉教授、国際医療福祉大学言語聴覚センター長の新美成二先生の講演「Professional Voice Userに多い音声障害」を聞いてきました。(2010年7月)

まとめです。

発声のメカニズム

わかりやすい発声の仕組み

ラッパは唇をブ~ッと振動させて、ラッパの中の空気が共鳴して外へ音が出ます。

声はこの唇が声帯に、ラッパのメガホンが口唇にあたります。

声帯は人によってあまり違わない。声帯から口まで(声道、共鳴空)によって様々な声となる。

舌、軟口蓋、開け具合色んな形をとることができ、練習によって上手くなれます。 

腹式呼吸について

声を出すにはいいと言われている。

胸式呼吸も呼気には変わらないが、なぜ腹式がいいかはっきりとわかっていない。

ウエスト60cmで膜と肺との接触面積を300平方cmとし、振幅2cmだと換気量は600ml。(安静時呼吸量500ml)

声帯

筋肉を粘膜が覆っている棚。 

固い組織の上に柔らかい組織あって風(呼気)が通ると振動しやすい。

1秒間に100回振動、女性は200回、ソプラノ400回位。

声の大きさ

・声の大きさ;呼気圧×呼気流 呼気圧呼気流を大きくすると喉をこわす(訓練していない人がよくやる)

・声の放射特性をよくする;口を大きく開けるなど、喉頭の形、動き安定する。音の出方が良くなる。オペラの歌い方。

・声帯の知覚;触覚あり(咳)温痛覚なし(のどの痛みは咽頭痛) 

固有知覚が鈍く、どのくらい収縮したかわからない。音の高さを聞いて感じる→聴覚の重要性

「発声しやすくなるあめんぼの歌」

Professional Voice Userに多い音声障害 

声の使いすぎ

1.声帯ポリープ;無理して声を出すと痛々しい声 声帯に血種 除去すれば治る

2.声帯結節(よう人結節);ザラザラした声、声帯の真ん中がふくらむ

取ってもまたできる、声の出し方を直す

3.学童嗄声

不摂生

1.禁煙、ポリプ様声帯;声帯全体がむくむ、女性喫煙者(飲み屋のおばさんの声)

2.GERD、胃食道逆流症と咽喉頭疾患
暴飲暴食により胃酸が逆流して食道へ、迷走神経を刺激しイヤな症状を起こす
咽喉頭異常感 嗄声 咳 げっぷ胸焼け

3.風邪 

不可抗力

加齢、怪我

声に悪いこと
・風邪→だまる プロは風邪ひかないこと
・体調不良(睡眠不足、栄養不足、水分不足)→12時までに寝る
・声の酷使、乱用→息ばかり使わない、口をはっきり、マイクの上手な使い方
・咳払い→癖があればなおす
・ささやき声→小声で話す
・乾燥
・冷え
・ほこり、たばこ(口から湿気なしにほこりを吸ってしまう)
・暖房、空調、飛行機
・鼻の病気(口呼吸、鼻汁がのどに流れる)
・急激な体重減少(声帯の筋肉がやせる)
・電話(話すしかないのでよくない)

プロの声対策

プロの場合声の使う量と場所に優先順位をつける。たとえば
1ステージ
2練習
3教える
4プライベート(だまる)

その他
・のどに悪い食べ物 刺激物
・アルコール 充血する、声が大きくなる
・うがい 余計乾く、たびたび濡れることが大切、チビチビ水を飲む
・タバコ(論外)受動喫煙
・加齢 声の変化 唾液量の減少、呼吸筋など結合組織がゆるむ

色んなものが合わさって変化
60過ぎてステージが減る、いざというとき声出ない→レッスンしてください。

Q.加湿器やネブライザーはどんなものがお勧めですか?
A.濡れタオルを干す、枕元において寝る、湿度は60%

Q.うがいはダメなんですね?
A.うがいは声帯まで届かない
どうしてもしたかったらアズノール、アズレンを使ってください。

Q.のどあめはいいですか?
A.唾液の分泌を一時的に増やしますが、甘いとよけいのどが渇く。水をチビチビ飲んでください。

Q.咳止めは?
A.咳がいけないので使っていい。プロは風邪ひかないこと。

ボーカルがライブで声が不調なとき、体と喉のケア」


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

詳しくは プロフィール