その症状耳のせいかも?音楽家に本当に大事な耳知識
こんにちは。
ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト、進藤浩子です。
耳は聞くだけじゃない、実は体の外側、体勢、精神面、他の器官と大きく関わります。
大切な聴覚を守るためにも、耳で感じる症状について、知っておきましょう♪
※音楽家が耳の意外な大切さを理解するための記事なので、疾病情報は簡単です。
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耳の働き
- 音を聞く聴覚
- 体の動きを感じる、平衡感覚
聴覚の特性
聴覚は、視覚と違って焦点を当てることができます。
騒がしい中でも、知っている人の声を聞き取れるカクテルパーティー効果のように、自分のパートの音はよく聞き分けられます。
聴覚は胎児にもあって、妊娠20週から母親の声や心音が聞こえています。
成長すると、母語のように聞き取れる音と、外国語の発音など聞き取れない音ができます。
日本人が英語のLとRの違いがわからないように、何回繰り返し聞いても聞き取れません。
眼は閉じれば見えなくなるが、耳は封鎖できず聞こえてしまいます。
視界は前方だけですが、聴覚は全方位から。形的に前からの音が聞こえやすい。
雷や大雨、警報音など、寝ていても聞こえるように、危険から身を守る役目もしています。
平衡感覚
内耳の中にある半規管は、回転、頭や体の動きを感じとります。
前庭は重力、遠心力、直線加速度、頭の位置や傾きなどの外部からの刺激を感じとります。
ジェットコースターに乗ったときに、感じますね。
片足立ちをしていて目を閉じると、とたんにバランスを崩します。
平衡感覚は、視覚や腕や脚の深部感覚なども統合して全体を保っています。
この感覚があるから私達は、立ったり姿勢を保ったりできます。
耳で感じる異常
- 聞こえが悪くなる
- 耳鳴り
- めまい
- 乗り物酔い
- 気圧の変化
騒音性難聴
大きい音や長時間音にさらされて、聞こえが悪くなる。
Vi、Flは片方の耳、楽器側の聴力が落ちます。
カラオケは90dB、ロック、オーケストラの音は100~130dB。
加齢や音響外傷によって内耳の器官が壊されることで、聴力が落ちる。
耳を休める。リハやステージが連日続くときは、耳栓で耳を守る。
突発性難聴
難聴の発生と前後し、耳の詰まった感じ、めまい、耳鳴り、吐き気などを伴うこともある。
ストレス、心理的負担によって、起こるとされています。
加齢性難聴は徐々に聴こえが悪くなり、突発性難聴は突然聴こえなくなる。
聴覚のしくみ
空気の振動が鼓膜を震わせて、鼓膜にくっついた中耳の耳小骨を介して内耳に伝わります。
内耳の蝸牛(カタツムリみたいな形)で振動を電気信号に変え、聴神経を介して脳に情報を送ります。
音は脳で聴いています。
外耳=[鼓膜]=中耳(耳小骨)=内耳(蝸牛)ー聴神経 →大脳皮質の聴神経野
1図
中耳炎、耳管について
急性中耳炎 主に鼻咽頭(鼻の奥)から、細菌やウイルスが耳管を通して感染します。
耳が痛い、聞こえづらい。
1図の中耳から出ている耳管が、鼻の奥に開いています。(2図右にある耳管咽頭口)
耳が詰まると嚥下して耳抜きしますね。
耳管は普段は閉じていて、物を飲み込んだりすると開いて耳の内と外の圧を同じにします。
耳の中を、喉を使って鼻の奥から調整してます。
2図
耳管開放症、耳管狭窄
耳管開放症
耳管が開きっぱなしになって、自分の声や息の音が響いたり、相手の声が聞き取りにくい。
会話しづらくなる。
重力の関係で立位でなりやすい。立ちっぱなしのときに耳がぼーっとする。
特に激しい運動時になりやすい。
交感神経が優位になって、末梢の血流が少なくなり粘膜のうっ血がとれて鼻がよくと通ると耳管が開きやすくなる。
妊娠、急激に痩せてなるケースも。
耳管狭窄
体調によって、耳管が狭くなります。
風邪をひいたり鼻炎があると一過性になって、飛行機に乗って耳が痛くなったり、着陸時に痛くなる。
耳鳴
ほとんどが音の処理を担う脳の部位の異常な活動によって引き起こされます。
脳で鳴っている音。
耳鳴りがあっても気にせず生活できますが、大きく苦痛になると問題になります。
一般的な原因として、
・大きな騒音や爆発にさらされる(音響外傷)
・特定の薬による聴覚器への障害
・加齢(老人性難聴)
・メニエール病
・精神的ストレス
・騒音などの生活環境が体に与える身体的ストレス
・睡眠不足などの生活習慣
精神的ストレス、身体的ストレスはわかりにくいせいか、医学的には原因に含まれていません。
しかし、精神的な負担が大きい時に鳴る人もいます。
眠ろうとしているときに最も障害になる(耳鳴りがして眠れない)。
同時にめまいが起こることも多く、それらがストレスとなり、さらに症状を悪化させる悪循環に陥ります。
耳鳴の音楽家:E.クラプトン、OASISのギャラガー兄弟 、坂本龍一さん、鈴木惣一朗さん。
めまい、乗り物酔い
めまい 内耳による視覚への影響。
視界が揺れると立っていられなくなる。
メニエール病は、ストレスが原因とされています。
車酔い 体が揺れ、気分が悪くなる、嘔吐する。
本やゲーム機を見るなど視覚の影響や、体調が悪いときも車酔いへの影響が大きい。
目が回る 回転して頭が揺れたり、視界が動くとめまいを起こす、気分が悪くなる。
(筆者はバレエで回転して、よく目を回します)
平衡感覚と視覚とは助け合いもしますが、影響も及ぼします。
気圧の変化、気象病
内耳が気圧のセンサーの役目をしています。
飛行機、新幹線、エレベーター、潜水など。
新幹線内は0.1気圧、加圧されていて、トンネルや新幹線とすれ違うときも圧が高くなる。
飛行機内は約0.8気圧。
飛行機で高いところへ上がると気圧が薄くなるので、耳が痛くなることがあります。
鼻詰まりがある人は特に。
気象病
気圧の変化が脳や自律神経を通して心身に影響します。
気圧が下がると、頭痛、首肩こり、めまい、耳鳴り、気管支ぜんそく、関節痛、神経痛、古傷の痛み、うつや不安症が出やすくなります。
梅雨の時期や大型低気圧である台風の接近で、気圧は低下します。
耳と体、特別編
発声
耳の重要な働きは、自分の発声をコントロールすることです。
自分の声が聞こえているので、声量や口の動きを調節できます。
騒音の中で自分の声が聞こえなかったり、耳管が開いて自分の声が聞こえすぎると、話すのが難しくなります。
聴覚に障害がある方は、声を出せて言葉を理解できても声のフィードバックがないので、流暢に話せません。
発声に大事なのは、聴覚です。
聴こえ、音感をよくする方法を講座で指導しています。
≫ステージでリラックスできる体調律プログラム(他の楽器向け)
メラニン
ベートーベンがなった耳硬化症は、白人に多く有色人種、黒人や日本人にはあまりありません。
メラニンが内耳に保護的に働くと考えられています。
日を当たることで脳からメラトニンが分泌され、メラニンが調整されます。
メラトニンは体内時計にもなっているので、日照時間に合わせた生活が、メラニンが内耳へ保護的に働くことが推測されています。
早寝早起きは、耳だけでなく体にいい、体にいいことが耳にいいんです。
耳は自律神経の鏡
めまい、耳鳴り、突発性難聴は、ストレスや疲労などが引き金になります。
自分でも把握できない心身の状態が、耳の症状に表れます。
メンタルの安定、体の健康状態が耳の症状には大事です。
おわりに
耳は、喉、鼻とつながっています。
水から陸に上がったヒトが、体を守ったり互いにコミュニケーションを取れるよう、聴覚や発声が発達しました。
人は耳のおかげで立って、音でつながり合い、楽しんだり感動したり癒やされます。
耳は聴覚はもちろん、体や心の健康状態を映します。
かつ、耳の異常は、発声や自律神経を通じた心身のコンディションに大きく影響します。
音楽家にとって一番の敵は、大きい音にされされること、大きい声を出すことです。
大切な聴覚を守るためにも、大きい音から耳を守ってきちんと睡眠をとって、ストレスや疲れをためないように^^
《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》 バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。 趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話♪ 詳しくは ≫プロフィール |