天才音楽家は努力か才能か?ー天才の練習とは

1万時間の法則と言って、1万時間練習すれば一流の音楽家になれるという報告があります。

こんにちは。音楽家のフィジカルセラピスト新堂浩子です。

 

イチロー選手は小学生の時に、ほぼ毎日同じバッティングセンターに通い、365日中360日激しい練習をしていました。

そもそもなぜ、そんなに努力や練習ができるのでしょうか?

音楽家は、どう練習したら天才に近づけるのでしょう?

 

1万時間の練習で一流音楽家に

心理学者のK・アンダース・エリクソンは、世界的な音楽家になる可能性とその練習時間との関係を調べました。

西ベルリン音楽アカデミーで学ぶバイオリニストを対象に行った調査です。
 
・ソリストになることが期待される最も優れたレベル
・優秀でオーケストラの演奏家になれるレベル
・音楽教師レベル
 
の3グループに分けて、親族に音楽家がいるか、練習時間など様々な調査を行いました。
 
 
違いは、練習してきた累計時間で20歳ごろまでの累積練習時間が、
 
最も優れたレベルは1万時間、それ以外は数千時間の差がありました。
 
 
学生は8歳ごろレッスンを受け始めているので、
 
20才までの12年間で毎日2時間以上を365日したことになります。
 
 
余談ですが、マルコム・グラッドウェルがこの研究を紹介した本「天才! 成功する人々の法則」には、
 
ビートルズが売れる前、ドイツのハンブルクで毎日8時間もぶっ通しで演奏して、演奏力が上がったことも書かれています。
 

努力できる人、できない人

努力できる人と努力できない人は、遺伝の影響を大きく受けているという報告があります。
 
米ミシガン州立大学の調査によると、努力できるかできないタイプかは、一卵性双生児の方が二卵性双生児より一致していることがわかりました。
 
 
努力できるのは遺伝の影響が大きく、脳の違いに寄るところが大きいということです。
 
これらのことから、優れた音楽家は、必要な長時間の練習ができる遺伝子プログラムである。
 
努力すること自体が、生まれ持っての才能によるところが大きい、と結論づけました。
 
 
トップアスリートや活躍する音楽家は、側から見ると苦しい努力を積んできたように思います。
 
もちろん想像を絶する努力をしているには違いありませんが、努力できない人からするとそんなに苦と思わない努力のようです。
 

努力を続けられる脳ー報酬系

努力できる人は、脳内の報酬系というところが活発に働くそうです。

努力できる人は「これをやったらいいこと(成果やお金)が待っている」ことで、脳内で多くの快楽物質が出ます。

こういう報酬系のおかげで、続ける努力ができます。

 

努力できない人はこの報酬系の働きが弱く、物事の損得勘定を計算してムダな努力はやめようとなります。

報酬を感じる脳で、損得を冷静に考える機能が弱い人が努力できる人となります。

音楽家になっている時点で、努力できる脳、努力できる人です。

上達できる練習とは

心理学者のエリクソンは、ただ毎日2時間バイオリンを練習しても、ただ漫然と行われる練習であるならばそれほどの効果は発揮できないと言っています。

最も優れたグループの学生たちは「明確な目標と高い向上心を持って成長するように練習していた」そうです。

 

彼は目的意識と向上心を持ち、集中的に取り組み努力を重ねていく練習、デリバレートプラクティス(計画的な練習)を薦めています。

・明確な目標を揚げそこに到達するよう構成された練習

・弱点を克服するような課題に取り組むこと

・コーチによる定期的なフィードバック

すぐに成果が出るものではなく長期に渡るものであることと言っています。 

「彼女に才能は一切無い」

この記事を書いたのはロシアのフィギュアのコーチ、エテリコーチのセリフがきっかけでした。

エテリコーチは多くのオリンピック選手を育て、教え子のザギトワ、メドベージェワは、平昌オリンピックでそれぞれ金、銀メダルでした。

メドベージェワ選手の母親はフィギュア選手だそうです。

 

エテリコーチはインタビューで「メドベージェワは才能は一切無い。

今の彼女は努力の賜物。彼女は気の遠くなるような努力をしている」 

 
 
中野信子氏によると、練習すればするほど努力が成果として表れやすいのは楽器、運動、絵画、語学や受験勉強だそうです。
 
身長や足の長さなど身体的な差は努力しても変えられないので、スポーツの世界では努力しても無理なことはあります。
 
これを考えても、体系的に恵まれているとは言えないイチロー選手や錦織圭選手が才能を磨いた努力はすごいですね。
 

参照)
”The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance”

「あなたの脳のしつけ方」中野信子


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

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