音楽家に起こりがちな、肩、腰、耳、喉などの症状や疾患をまとめてあります。
手と腕に関しては別ページ▶音楽家に起こりがちな手腕の不調
正確な診断には、適切な医師の受診をおすすめします。
肩の故障
肩関節は自由度が高い分、痛めやすい部位。
一般の人でも40才以降は、関節周囲組織の加齢から肩のトラブルが多い。
肩の故障は日常生活にも、演奏にも大きく影響します。
中年以降は肩に負担になるような運動を避け、重い荷物を肩にかけない。
肩関節周囲炎(五十肩)
片腕が痛くて挙げられない、肩関節の激しい痛み、夜間痛。
衣服の脱ぎ着やシャンプーなどが困難で、日常生活に支障をきたす。
肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)が加齢により炎症。
半数は肩への負担がきっかけで発症。「凍結肩」とも言われる。
痛みが激しい3〜4ヶ月は安静、無理に動かさない。
動かせるようになったらリハビリを兼ねて動かす。時間はかかるが治る。
腱板断裂
55才から60才代に多く、6割が男性で、右肩に多い。
肩の酷使、強い外力後に発症しやすい。夜間痛など痛みが激しい。
四十肩との違いは、片方の手で持ち上げると挙げられる(動かせる)。
腱板という肩峰と上腕骨頭にある組織が、劣化するため。
動きやMRIで鑑別診断、鎮痛、運動療法等。
若い年齢では、投球などで腱板損傷を起こす。
石灰沈着性腱板炎
40〜50代の女性に多い。
腱板内に沈着した石灰により、痛みが激しく、腕を動かし辛くなってしまう。
五十肩と違って腕は上げられる。
レントゲンによる診断。
ほとんどが注射や吸引など保存療法で軽快。場合によっては手術。
寝違え
《寝違えた時の対処法》
腰痛
楽器の重さ、姿勢の悪さ、機材の運搬、長時間同じ姿勢などにより腰部に負担がかかります。
普段から、いい姿勢や適度な柔軟性をつけておくように。
まれに解離性大動脈瘤、尿管結石などの内臓疾患から腰痛を起こすことがあります。
ぎっくり腰(急性腰痛症)
突発的に腰回りの筋肉・筋膜を痛めた状態。
疲労によるものも。
次第に動けるようになる。
積極的に動かして再発を予防する。
《ぎっくり腰で動けない時の改善法》
腰部椎間板ヘルニア(片足にしびれ)
前屈みで腰や臀部に痛み、片足にしびれや力がはいりにくくなる。
お尻から大腿の後ろ側にピリピリと神経症状が走ったり、膝下から足の先までしびれ。
姿勢の悪い動作や喫煙で発症しやすい。
ヘルニアについて
いわゆる背骨、脊椎の隙間から、手足に行く神経が出てます。
首は頚椎、腰は腰椎で、骨同士の間に隙間に「椎間板」というクッションがあります。
首の頚椎の椎間板が潰れると、手にしびれが出たり(頚椎ヘルニア)、腰椎から出て脚に行く神経によって、脚に電撃様の痛みが走ったりします(腰椎ヘルニア)。
腰椎の椎間板が狭くなると、歩きにくくなります(脊柱管狭窄症)。
首や腰の椎間板を潰さないよう、適切に柔軟さがあって動けていることが大事です。
腰椎の隙間に椎間板(青)
←左が背中、右がお腹→
脊髄神経から足へいく神経↑(黄色)
腰部脊柱管狭窄症(歩けない)
腰痛はあまりなく、続けて歩けない。
安静時には症状がない。
背を反らすと症状がきつくなり、前かがみになるとやわらいで歩きやすい。
加齢、労働によって下肢へ行く神経が圧迫されるせい。
のど(声)
声枯れ(声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯)
声が出にくく、無理して声を出すと、ガラガラした声が出る。嗄声。
声帯縁が不整で、振動がよくない状態。
よくならなければ、外科的に切除。
ポリープ様声帯は、飲酒、女性喫煙者に多い。(飲み屋のおばさんのガラガラ声)
加齢的変化により、声が枯れやすい。歌手や俳優など声を出していると、変化しにくい。
喉の痛み(急性喉頭炎、風邪)
喉にヒリヒリ、イガイガした痛み。
空咳、咳払い、しゃがれ声、飲み込みにくい。
多くはウイルス感染による粘膜の炎症。極端な気温にさらされても起こる。
声の使いすぎ、タバコ、ほこりなどの刺激。
風邪
話さず、完全に声帯を休める。
プロは風邪、引かないこと。
風薬やアレルギーの薬は、粘膜を乾燥させてしまうことがあるので、要注意。
声が出せない(発声障害)
心因性。
ボツリヌス菌注射が、保険適応になりました。
逆流性食道炎
咽喉頭違和、嗄声、咳、ゲップ、胸焼け。
暴飲暴食しない。夜に油分や肉を食べ過ぎない。
顎、口
顎関節症
口を開けにくい、痛い、咀嚼しにくい、耳の前の関節で音など。
原因としてストレス、固いものなどで顎の使いすぎ、食いしばりや歯軋り。
安静、歯科受診、時間の経過で治る。
口輪筋の損傷
管楽器奏者の演奏中、突然の痛み。
顔の筋肉は細いため、過度の緊張によって筋線維が炎症を起こす。
耳、難聴
極端な音量で、耳鳴りやゆがんで聞こえたり、音の質が変わって聞こえたりします。
音圧が最大になった時の衝撃は大きく、
オーケストラ140dbs
ロック150dbs
フルート85~111dbs トロンボーン85~114dbs
プロの音楽家の半数近くが聞こえに問題があることが明らかで、バンドで弾いている人は一般学生にくらべて、問題がある人が2倍以上という報告がある。
聴覚低下を器具で補うことはできても、正常にもどすことは難しい。
対策
・静かな休息を組み込む。
例えば2~3時間毎に15分、騒音にさらされた後は1~2日休む。
内耳に受けたダメージを回復させる。
・音源から離れる 金管パートの前には他の奏者を置かない
・遮音板、天上や壁に吸音板やパネル、音響調節スクリーン、コルクボードやカーテン、カーペットなど吸音素材
・イヤモニ(エティモティックリサーチ、センサフォニクス、ウエストン、型どりして作るもの)
参照『図解 音楽家のための身体コンディショニング』音楽之友社
『音楽家の体メンテナンスBOOK』春秋社
伝音性難聴
外耳(耳介&外耳)と鼓膜及び中耳、つまり音を神経まで伝達する器官の障害による難聴であり、中耳炎などによる難聴はこれに当たります。
聴覚神経に異常がないので治療できる可能性があり、補聴器の効果が大きい。
感音性難聴
内耳か又は聴覚神経に障害がある。
現在の医学では治療が困難で、補聴器による改善は可能ですが効果は様々。
他に騒音性難聴(ヘッドホン難聴も)、薬剤性難聴(ストマイシン・カナマイシン等)、メニエール病、ストレス性難聴等
混合性難聴
伝音性難聴と感音性難聴の両方を併せ持っているのが混合性難聴。
どちらの度合いが強いかで補聴器の効果に大きな差があります。
老人性難聴は多くの場合、混合性難聴で、加齢に伴って進行する。
突発性難聴
原因は解明されていませんが、適切な対応で治る可能性も多い。
異常に気づいたら、一刻も早く医師に相談してください。
以下、国の難病情報センター、突発性難聴より
突発性難聴の主症状
1.突然の難聴
文字通り即時的な難聴、または朝眼が覚めて気付くような難聴。
ただし、難聴が発生したとき「就寝中」とか「作業中」とか、自分がその時何をしていたかが明言できるもの。
2.高度な感音難聴
必ずしも高度である必要はないが、実際問題としては高度でないと突然難聴になったことに気付かないことが多い。
3.原因が不明、または不確実
つまり、原因が明白でないこと。
副症状
1.耳鳴り
難聴の発生と前後して耳鳴りを生ずることがある。
2.めまい、および吐き気、嘔吐
難聴の発生と前後してめまいや、吐き気、嘔吐を伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない。
足
片足にしびれ
腰椎ヘルニア↑
足底腱膜炎(痛み)
足の裏に痛み。歩くときや最初の一歩に痛み。
硬い靴やクッション性の高いシューズなど履物や運動量の低下のせいで、足底の柔軟性や可動性が不十分になるせい。
日常の歩行やジョギングなどで負担がかかってしまう。
痛いときは手でマッサージ。
足首や指を動かし、適切な靴を履いて動く。
体の色々な不調、不定愁訴
過呼吸・パニック障害などの呼吸器症状、声がかすれたり出にくくなる。
下痢、嘔吐、頭痛、食欲不振など消化器症状、不眠、めまい、耳鳴り、聴覚や視覚聴覚の不調など。
臓器が悪くて症状が出るのではなく、精神的心理的な負担から体に症状が出ます。