手の造り、動きについてわかると、演奏で指や腕が痛くなる理由がわかります。
筋肉をはじめとする手の解剖、手の動き方、動きやすいコツなど、まとめました。
筋肉について
筋肉の役割
筋肉の主な役割は、骨を動かすことです。
筋肉の端の方は細くなって、骨に付いている部分を「腱」と呼びます。
筋肉が縮むと両端の腱が骨を引っ張って、動きが生じます。
筋腹(縮む)腱(縮まない)骨
↓ ↓ ↓
指の関節は、腱をはめている鞘(さや)があって、腱鞘(けんしょう)と呼びます。
腱や腱鞘が擦れて腫れたり痛みが出たり、スルスル動かなくなるのが腱鞘炎です。
筋膜
筋肉を覆っている弾力のある繊維性の丈夫な結合組織を、「筋膜」と言います。
弾性繊維のエラスチンとコラーゲン繊維から成ります。
コラーゲン繊維はゼラチン状で、寒いとかたく、暖かいと液化して動きやすくなります。
骨について
関節
関節は、骨と骨が接する部分に隙間があって、ここで動きが起こります。
(引っ付いて動かない関節もあります)
関節は、関節包というカプセル様に包まれていて、中には滑液という粘液があって滑ります。
手の筋肉学
演奏者向けに手の造りについて、必要最小の解剖とイラストで説明します。
指の動きに必要な、肘から先についてとします。
ただ、動きは一つの筋肉の作用ではなく、たくさんの筋肉の動きが合わさって手が動きます。
そしてそれらは、神経系によって調節されます。
注釈)
四指とは;人差し指、中指、薬指、小指
筋肉名;作用 [筋肉が付く骨]〜[筋肉の反対側が付く骨]
第一関節、第二関節;爪側の関節、爪から二つ目の関節
指、手首を曲げる筋肉
指や手首を曲げる屈筋は、主に前腕の掌側にあります。
手を握る時には屈筋が働いて、強い力が入ります。
浅指屈筋;四指の第二関節を曲げる [上腕骨の肘内側]〜[四指の中節骨]
深指屈筋;四指の第一関節を曲げる [尺骨(前腕の小指側の骨)]〜[四指の末節骨]
>小指側を軸に手を使うことで、四指を曲げやすい。
この2つの屈筋は共同で働くので、四指の第一関節と第二関節は同時に曲がります。
>[腕]から長い腱が手首を通って[指の骨]に付くので、指を動かしやすいためには、手首の角度、腕からの使い方が大事。
〈右手、掌側の屈筋〉
図左)手首を曲げる筋肉;上腕の下端〜掌の骨に腱(白い)
中)四指の第二関節を曲げる浅指屈筋;腕〜四指の途中まで腱
右)四指の第一関節を曲げる深指屈筋;腕〜四指の先端に腱
長母指屈筋;親指の第一関節を曲げる [前腕の骨]〜[母指先端の骨]
指、手首を伸ばす筋肉
手や指を伸ばす伸筋は、主に前腕の手背側、甲側にあります。
総指伸筋;四指を伸ばす [上腕骨外側]〜[四指の骨]
示指伸筋;人差し指を伸ばす [前腕の骨]〜[人差し指]
>人差し指を伸ばすとき、手首が曲がらない方が使いやすい。
小指伸筋;小指を伸ばす [上腕]〜[小指の骨]
>小指は伸ばしやすい
手首を通り指先まで伸びる伸筋の腱=甲に見えるスジ
↓ ↓
短橈側手根伸筋;手首を伸ばす、反らす [上腕骨]〜[中指の付け根の骨]
長橈側手根伸筋;手首を伸ばす、反らす [上腕骨]〜[人差し指付け根]
尺側手根伸筋;手首を反らす、小指側へ折る [上腕骨]〜[小指の付け根]
指の独立した動き
掌の中にある骨間筋により、人差し指、中指、薬指が分離して動きます。指が開いたり閉じたりします。
親指、小指は、母指球、小指球にある筋肉でも、開いたり閉じたり曲がります。
鍵盤や弦を押さえてキープするのは、虫様筋[深指屈筋腱〜指背腱膜]という小さな筋です。
手首から指が分離するまでに付く小さい筋肉で、小さい力で動きます。
人差し指、中指、薬指の骨間筋
母指球、小指球にある筋肉
虫様筋
手の動き
人が動くときには、体すべての筋肉が協調して動きます。
指を動かすときも、それぞれの部位の動きが組み合わさって、滑らかに動きます。
筋肉が骨同士を寄せたり離したりして、関節が曲がったり伸びたりします。
動きは関節で起こります。
動きやすいとは、関節が屈伸しやすいことです。
指の動き
・指を曲げる
・指を伸ばす
・指同士を開く
・指同士を閉じる
・親指と他の指が向かい合う(対向)
手首の動き
・手首を掌側へ曲げる
・手首を伸ばす、反らす
・親指側へ曲げる
・小指側へ曲げる
前腕の動き
肘から先が回転する
・掌を下に向ける(回内)ページをめくるような動き
・掌を上に向ける(回外)
カスタネットを片手において、反対の手で叩くように腕の小指側を回転軸とすると、動きやすい。
>音楽家の腱鞘炎対策
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《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》 バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。 趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ♪ 詳しくは ≫プロフィール |