音楽家のあがり、メカニズムを知って克服しよう

「手がかたくなって普段どおりに動かせない

「間違えたらどうしようと不安…」

「あがってしまって練習のように吹けない」

 

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のためのパーソナルトレーナー新堂浩子です。

人前に出て歌や演奏することは、緊張しますよね。

自分では意識しなくても、「人前に出て奏るのが怖い」心理が体に生理的な反応を起こします。

あがりを起こす体のメカニズムと、簡単にできる克服法を紹介します。

あがりの生理ー交感神経系

自律神経系

自分で動かせるような運動神経系と違って、体は無意識のうちに自律神経系によってコントロールされています。

循環、呼吸、消化、発汗・体温調節、内分泌機能、生殖機能、代謝のような機能をコントロールし、

色んな生理的パラメータを調節して恒常性を保っています。

 

アセチルコリンとノルアドレナリン、ドーパミンなど、自律神経系の機能を担う主な神経伝達物質は、

分泌されたり受容器で受け取られて、交感神経線維を伝って信号を伝え、色んなところに変化が起こります。

 

交感神経系は「闘争と逃走」の神経と言われ、激しい活動を行っている時、

副交感神経系は「消化と休息」リラックスしている時。

緊張すると交感神経系が高まって闘争・逃走モード、興奮して力が出る状態になります。

 

あがりの体の変化

交感神経系の亢進により血管が収縮し、心拍数が増加し血圧が上昇、骨格筋への血液供給量が増加する。

気管径の増加をもたらして、一回換気量の増加を向上させることとなる。

 

多くの人が経験あるように、心臓がドキドキ、呼吸が大きくなって、体を動かす筋肉はかたくなります。

汗をかいたり唾液が減ったり、消化器の働きが弱くなります。

 

パートによって症状が特異的で、楽器に触れるところに症状が出やすいです。

鍵盤の人は手がかたくなったりしやすく、吹奏の人は口が乾いたり指が動きにくくなったりします。

 

あがりを起こす心理

交感神経系が亢進する理由は、心理的な要因があります。

人前に出てパフォーマンスする、「上手くやらないと(ミスしてはいけない)」という潜在的な心理があります。

 

幼稚園の頃は、何も気にせず大声で歌ったり踊ったり、楽しくやります。

学校に上がると、音符や人に合わせて「上手に、正確に」歌や演奏することを学び、評価されます。

人に評価される、ミスしたら恥、上手く歌や演奏できないとダメという意識が潜在的に埋め込まれます。

 

評価の高い演奏でないといけない、失敗して自分の評価を損なう怖さでハードルをあげてしまいます。

 

あがり克服のためのメンタル

多くの観客を見たら怖くなったり、間違えたらどうしようと不安になります。

あがりによる”余計な考え”や体、手のかたさなどによって、実力通りのパフォーマンスができなくなります。

心理と身体、両面から対策を考えてみましょう。

 

思考に邪魔させない

レッスンで身に付けた動きのコントロールは、考えなくても自動で動きを操ります。

自分が技術的にできることなら、できるのです。

動きを意識したり余計な思考が邪魔をすると、自動でできる動きを邪魔します。

 

不安や「失敗するかも」という疑いをもつのは、緊張しているせいということを理解しましょう。

余計な思考に邪魔させず、叩き込んだプログラムで動いていきます。

不安な気持ちが起こるのは自然なことなので、そういう気持ちにどう関わるかです。

 

あがることを許す

「あがってはいけない」と考えがちです。

不安な気持ちや体に症状がある以上、それを否定することは、余計思考や生理現象を混乱させ症状を強くします。

 

あがりは悪いことでなく、緊張感があって心身が活発になるから普段よりもいいパフォーマンスができます。

あがっちゃいけないことはない。

あがることを許しましょう。

 

本番前、身体的な興奮や不安を感じたら、それを認めて、緊張している自分を受け入れます。

あがってよし!

あがっている自分を受け入れる方が、心身共落ち着きます。

 

目的に目を向ける

ステージなど緊張してしまう場面で、“ミスしないこと”に意識を向けがちです。

歌や演奏を披露する本来の目的を、思い出してください。

 

作品の魅力を伝えたい、セッションを観客や他のプレーヤーと楽しみたい、何かに対する情熱を伝えたい、与えられたチャンスとか。

歌や演奏をして観客に伝えたいこと、分かち合いたいこと、あなたの目的に意識を向けます。

あと、大切なこと、観客はあなたを批評するためではなく、生の音楽を楽しみたくて来ています。

 

リラックスのための身体的対策

体をほぐす動き、五感覚

筋肉がかたくなっているので、簡単なエクササイズでほぐします。

やり慣れているウォーミングアップ的な運動がいいです。

 

五感覚を利用してリラックスします。

自分が落ち着く香り、色、味、音、羽織りもの、画像など。

自分が落ち着く動きや色などをわかっておくことです。

 

笑う

顔の表情は心理に大きく影響します。

顔の筋肉や眼を動かす筋肉を使って、リラックスできます。

口角だけでなく、目の周りが笑うこと。

目をパッチリ開いたり、誰かと微笑み合ったり、こっそりヘン顔しましょう。

 

体を安定させる

あがっていると体がフラフラしますので、地に足をしっかり着け腰を据えます。

自分の体を山の如く想像してどっしりと、足底に自分の体の重みを感じます(グラウディング)。

体が安定すると気持ちは安心します。

 

ルーティンワーク

自分の体に目を向けて、感覚(運動感覚、皮膚感覚、聴覚など)を味わいながら、ていねいに動きます。

イチロー選手がバターボックスに入る前や、五郎丸選手がキックする前に、決まった動きをします。

ルーティンワークをやることで、精神統一できるような神経回路を作っているから、落ち着いて集中でき実力が出せます。

 

普段から、簡単な動作を落ち着いてやっていることで、ルーティンワークになります。

姿勢、構え、チューニングや超基礎的なレッスン、ウォーミングアップやルーティンワーク的な動作など。

タッチや音、動きや体に意識を向けて、ゆっくり丁寧に動きます。

 

動作を落ち着いてすることなら何でもいいです。

太極拳のような大きくゆったりとした動きは、体と思考を落ち着かせます。

日本人のコンマスで、本番前にお茶を立てる人もいます。

 

呼吸、瞑想

臓器の中で、自分でコントロールできるのは肺、呼吸だけです。

口を閉じ、鼻でゆっくり呼吸します。

「大きく深呼吸しましょう」と言われますが、静かに鼻で小さく息をすると、心拍も落ち着きます。

 

オリンピックなどで金メダルを取る人は、口を真一文字に閉じます。

パフォーマンスを上げ実力を出すために、深呼吸のような大きな息をしないほうがいいからです。

 

瞑想はここでは詳しく書きませんが、体に目を向け余計な雑念を追い払います。

体や呼吸に意識を集中して、リラックスしやすく不安を減らす訓練になります。

一朝一夕にはいきませんが、得られる効果は大きいです。

「瞑想」検索

 

以上、自分は何をしたら落ち着くか、体に目を向けることが必要です。

自分に合うものを見つけ、時間をかけて実践することで、集中&リラックスしやすくなります。

「リラックス方」

最後に

多くの場合、場数をこなすことで緊張が和らいだり、緊張しても落ち着いてやりやすくなります。

ミスしない人はいないです。人間は機械でもAIでもないので。

あがってもいいんです。

 

バレエの監督が本番前、舞台上でバレリーナたちにかける言葉は笑顔で「楽しんで!」

「楽しんで!」

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『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

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