自覚しないところのコントロール

人が動くとき、見えないところでされているコントロールが大きく、かつ、重要です。

演奏の動きやフォーカルジストニアを理解するためにも、“動きの調整”について知っておきましょう。

まずは基礎知識から。

・動き=運動

・コントロール=調整=制御 

・脳で主な働きをする細胞は、神経細胞、ニューロンといいます。ニューロン同士がシナプス(接合部)で繋がって、情報伝達をします。

大脳皮質

大脳皮質は脳の表面部分で、知覚、随意運動、思考など、高次機能を司ります。

運動の指令,学習の中枢です。

場所によってそれぞれ役割が異なっていて、運動野、聴覚野、視覚野などたくさんの領域に分かれています。(脳機能局在)

聴いたり、譜を見たり、動きの指令、作詞作曲、創造的なことは、この大脳皮質で行われます。

大脳皮質(管理薬剤師.com より)

聴覚野

聴覚野は、側頭葉にあります。

耳から入った音は、電気信号(インパルス)の形で、電気が電線を伝わるように内耳神経を伝わり、脳幹を通って大脳皮質の聴覚野に至り、音が知覚されます。

音におけるさまざまな情報が、聴覚野や他の領域で情報処理されて、意味のある音や声として統合、音楽を認識にしていると推測されています。

音の成分自体が複雑で研究が難しいこともあり、どのようにして音を情報処理しているのか、ほとんど判っていません。

脳マップ

大脳皮質の部位によって、司る働きがそれぞれ違い、脳機能局在性といいます。

ペンフィールドの「ホムンクルスの脳地図」には、感覚、運動、それぞれにおける対応部位が正確に皮質上にマッピングされています。

「ブロードマンの脳地図」が、脳の研究で用いられています。

指それぞれの運動、感覚に対応する脳の部位が、それぞれあるということです。

ホムンクルスの脳地図
左、一次体性感覚野、右、一次運動野の地図

大脳辺縁系

大脳皮質の内側にあり、大脳基底核の外側を取り巻くようにあります。(下図、赤色)

情動の表出、記憶、意欲、自律神経活動に関与。感情的な思考。

扁桃体、海馬 帯状回などの領域があります。

音楽の好みや感性、音楽を聴いて楽しい、美しいなどの情動は、この大脳辺縁系が司ります。

 

扁桃体

情動の中枢。

情動的な出来事に関連付けられる、記憶の形成と貯蔵における主要な役割を担っています。

喜び、直観力、悲しみ、痛み、恐怖感、不安など、快不快や好き嫌い。

価値判断、情動の処理、交感神経に関与します。

海馬

短期記憶の保持と長期記憶の固定。

海馬と扁桃体は、密接に関連しています。

赤 Limbic System;大脳辺縁系
内下方に基底核がある
右下、緑色;小脳
青 Brainstem;脳幹
黃 Spinal Cord;脊髄

小脳、大脳基底核

大脳皮質より下位にある、小脳と大脳基底核には運動の記憶があり,神経による”運動ループ”により、動作が生み出されます。

小脳

小脳は、ピアノの弾き方や自転車の乗り方を覚えるといった運動の学習・記憶に関わります。

神経細胞の一つ、プルキンエ細胞のシナプスで起こる神経可塑性は、運動の学習・記憶のメカニズムであると考えられています。

大脳基底核

身体の随意運動の調節や姿勢、筋肉の緊張を調整など様々な機能を司ります。

記憶をもとにした予測される運動に関与、前頭前野にある運動パターンの中から適切な運動の選択を行っています。

また、辺縁系への制御、眼球運動の制御、認知機能・感情・動機づけや学習など。

 

note『音楽家のための神経学』を理解しやすく

 『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』  

2022  3/22 春秋社より発売  春秋社のページ (目次あり)